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Tip 1

 

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No. 13-14

No. 1  9月19日 大阪府堺市・さかたいづひこさんから
Question

 どうしたら、僕も西尾さんみたいにイワナ釣りが上手になれるんでしょうか?

 
<一番大事なのは執念深さ?>
 そんな質問、ワシをバカにしとるだけや。ほっとけほっとけ!
 まあ、そう言わんと。だいたい、釣りもクルマも同じやねんから。必要なのは観察力、客観的分析力、集中力、体力・・・な、一緒やろ。
 そういえばそうやな。でも、もっともっと大事なもんがあるで。。
 むむっ、それって何?
 執念深さや。(マジで)。
 そういえば、私らが全日本ラリーに出始めたばかりの頃は、先輩選手に鼻であしらわれてたけど、「ゼッタイにチャンピオンになったる!見とれ〜」っていう気持ちで頑張ったなあ。たしかに執念深いわ。
 釣りの場合も、「ここにはサカナがゼッタイにおる」と信じたら釣れるし、最初から「おれへんやろなあ」と思いながら竿を出したら、やっぱり釣れへんことのほうが多いやろ?
 たしかに。でもまあ、執念は最後の最後に効いてくるもんやと思うから、まずはもっと最初の段階の話からいこうよ。

<観察することと自分で考えること>

 観察することと自分でものを考えることは何をするにも大事やな。同じような場所で釣ってて、ポンポン釣れるヤツがいるのに自分は全然釣れへん。それは何がちがうのか、よく見る、あるいは考えることが大事や。糸の太さ、針の大きさ、錘下の長さ、エサの種類やつけ方、立つ位置とか竿の振り方とか、着てる服の色まで影響する。要は、サカナに悟られんようにということやねんけど。エサの動きが自然やったらサカナは警戒心を解く。ちょっとでも不自然なところがあったら、賢いヤツは食えへん。
 まず最初は観察することと考えることやね。クルマの場合なら、速い人と自分とのちがいを知ること、そして、そうなるにはどうすればいいか考える、ということかな?
 うん、何も考えずになんとなく走ってるだけでは永久に上達せえへんやろなあ。何事も頭を使って目的意識をもってやらんとアカンのとちゃうか? もう一つ大事なことは、観察することとも部分的にダブってると思うけど、客観的に分析するということや。糸を変えてみたらどうなったか、エサを変えてみたらどうなったか、いろいろ変えて試したことを、きっちり比較評価する。どういうことをしたらどう変化したかがわからんと、何をやってもムダやろうな。
 それには、変えたことの効果がわかるような比較、知りたいことがわかるような比較をすることやね。

<適切な比較をする>

 そう。たとえば、タイヤとショックをいっぺんに換えてタイムが上がっても、タイヤのおかげでタイムが上がったのか、セッティングがよくなったからタイムが上がったのかわからへんやろ。基本的には比べたい部分以外の条件を揃えることやけど、それがでけへん場合は、条件が揃っていない部分をどう評価するか、そういう判断も必要になる。それができるようになるには、ある程度経験がいるけどね。
 ダートでは路面がどんどん変わってくるから、完全に同じ条件で比較するというのは不可能に近い。渓流釣りにしても、陽射し、気温、風と、まわりの状況はどんどん変化してる。どちらもそういう点では、常に変化する状況をどう考えに入れるかが難しいところやね。
 うん。だから比べたいことはなるべく同じ時にする。タイヤテストのときに、1、2回走るとすぐに次のタイヤに換えるのは、なるべく条件を同じにして比較したいからや。逆に、別の時にしたことは、そのデータをそのままうのみにせず、条件の違いもちゃんと考えて評価せんとあかんわな。たとえば、ある日にある林道を走り、1週間前にも同じ場所で走ったとする。路面状況や気温を同じと考えてもいいぐらい条件が合っていれば、そ の2回のデータをそのまま比較してもかなり信頼性の高い議論ができると思うけど、路面が全然ちがう場合は比較しても意味がない。
 テストのときはいちいち記録できるけど、ラリー本番中とか釣りの場合はそういうわけにもいかへんやろ? そういう場合は自分で覚えてないとあかんわけやね。
 そうやな。タイヤやショックのテストの場合は、1〜2回走るごとに評価表に記入するとか自分でメモを取るとかするけど、ラリーの本番中にはいちいち書いてられへんな。 SSごとにショックの設定やタイヤの空気圧を変えることもあるし。どういう設定で、どんな路面で、クルマがどういう動きをしたかというのは自分の頭で覚えとくしかない。ま、ボクのコンピュータのような頭脳をもってすれば、そんなことぐらいは何でもないけどね。
 ほお〜。ものを覚えるのは苦手やったんとちがうん?
 ワシはな、お前のようにどこのメシが美味かったとかまずかったとかいうようなくだらんことは全然覚えてないけど、大事なことはちゃんと覚えてるんや。あのときはこういうポイントでよく釣れたのに今日は釣れへん。なんでやと考えたら、あのときは今日より水量が多かったとか、釣れた時刻がちがうとか、そういうことは完璧や。
 なるほど。

<物事を客観的に見る>

 それと、比較するときには「客観的に」見ることも大事や。タイヤやショックをテストするときに、「こうなるはずや」という先入観に引きずられたら正しい評価はでけへん。練習のときのタイムにしてもそうや。上手な人と一緒に練習して「同じタイムが出た」と喜ぶ前に、同じ条件で走ったかどうかもチェックしておかんとな。クルマの仕様は別として、路面状況が全然ちがうときに走ったタイムや、減り具合が全然ちがうタイヤで走ったタイムをそのまま比較しても意味がない。要は自分のことをどれだけ客観的に見れるか、やな。自分のできてること、できてないことを正確に把握してないと、どこをどう改善しようという考えもマトはずれになってしまうわな。
 当たり前のことやと思うけど、そういうことを意識できてない場合が多いみたいやね。意識してても、ほんとにそうするのは結構難しいやろうし。
 そうや。人間誰しも自分の都合のいいように考えるからな。晝田なんか、こんな(親指と人差し指で10センチぐらいの間隔を作って)イワナでも20センチやて言いよるからなあ。あいつは特別にチューニングしたメジャーを持っとるから、ちょっと大きいとすぐに30センチオーバーになる。

<練習の鬼になる>

 はいはい。さて、観察も比較もきちんとできたとして、次に必要なのは、考えたとおりに身体を動かす練習やね。あんたはクルマも釣りも、ものすごく練習しはったから。渓流釣りにハマった最初の頃は、管理渓流釣り場の常連になって「週間釣りニュース」に毎週名前が載るぐらいやったからねえ。「大阪の西尾氏が55匹」とかって。
  なんやそれは。そんなことは知らん。
  くだらんことやから記憶にないんやね。でも、比較的手軽に行ける管理釣り場でいっぱい練習したおかげで、いろんな状況への対応の仕方も身についたし、狙ったポイント に一発で投げられるようにもなったわけでしょ。だからホントの渓流に行ってもすぐに成果が出た。なにしろ、せっかく狙ったポイントに魚がいても、そこに投げられないと話にならないし、的を外して近くの水面をバシャバシャやると、それで悟られて逃げられてしまう。やっぱり、1投目で狙った場所に入れるというのはゼッタイ必要でしょ。だいたい、そのポイントに魚がいれば1投目で来ることが多いしね。
  そうやな。一般的に、1投目に来るのはそのポイントにいる一番大きいヤツ、それが釣られてしまったら、次に来るのはもう少し小さいヤツ。何度も投げるとどんどん小さくなる。
  猛練習を可能にする体力も必要かな?
 練習を続けるには「上手くなりたい」という気持ちが一番やろう。ある程度の基礎体力があれば、渓流釣りの場合はやってるうちに体力がついてくる。それにしても、ずっと前から渓流釣りをしてる北村クンなんかは、オレから見たら猿やな。釣り終わって帰るときに川を歩き下るスピードは人間とは思われへん。
 でもあんたの場合、釣れへんかったらなかなかやめへんし、釣れたら釣れたでやっぱりやめへんし、そうやってしつこく川を歩くうえに、釣れる場所を求めて人がめったに 近寄らんようなところまで行ったりするから体力がついたんとちがう?すぐにあきらめる人や、すぐに満足して帰る人なら、体力もそうつかんかったやろう。
 うん、やっぱり執念深さが大事なんや。

<やっぱり体力>

 一応納得しときましょ。で、渓流釣りの場合は執念深くやってるうちに体力がつくけど、ラリーの場合はそうもいかんでしょう。
 そうやな。せやから、ラリーのための体力づくりにも渓流釣りはええで。そういうわけでオレは渓流釣りをしとるんや。なにしろ、ラリーには持久力と腹筋力、背筋力が必要やからな。渓流を釣り上ると、自然にそういう力がついてくる。
 WRCワークスのチームドクターの話で、ラリーのSSを10km走るのは陸上競技で何kmかを走ることに相当するというのを読んだことがある。何kmという数字は忘れたけど、要はラリードライバーには高い心肺機能や持久力が必要ということや。それは隣で見てたらわかるわ。なにしろSSのあいだじゅうハヒハヒ言いながら必死でハンドルを回しつづけてるねんから。
 ハヒハヒ言いながら、なんて言うたら、まるでオレが体力ないみたいやんけ。
 ああ、この「ハヒハヒ」というのは、西尾雄次郎独特の呼吸法なんよね。
 どうもそうらしいな、オレは意識してないんやけど。
 私はダートラをした経験があるからわかるけど、ダートを全開走行するときのハンドルの忙しさは普通の運転では考えられヘんものや。6年ぶりぐらいでちょっとやってみたときは、1分ほど走っただけで腕が上がらんようになって、それを何本か走ったら腕がパンパンになった。1週間ほど両腕と上半身が筋肉痛やったわ。
 それはお前が運動不足でダレきっとったからやろう。運転には腹筋と背筋も必要や。手はハンドルを操作するし、足はアクセル、ブレーキ、クラッチを操作する。両手両足を 自由に使うには、身体を腹筋と背筋で支えてないといかん。
 コドライバーは一応足も踏ん張ってるけど、両手はノートを持ってるからやっぱり腹筋と背筋で身体を支えてるよ。私は高校生のときには背筋力が30kgぐらいしかなかったと思うけど、ラリーを続けてきたせいで、今では背筋力が100kg以上になってしもた。タイヤの積み降ろしにも腹筋と背筋を使うしね。
 少なくともラリーのあいだじゅう集中力を維持できるだけの体力は必要やなあ。疲れてくると集中力も判断力も鈍ってくるから。自分の思ったとおりにクルマを動かすこと も、自分の思ったとおりの場所に仕掛けを投げることも、集中力があってこそ可能になるわけやし。それに、運転も釣りも、その瞬間、その瞬間での判断の積み重ねやからな。
 そうやね。「ああ疲れた、もうどうでもええわ、とにかく早く終わってほしい」なんてことになったら、勝負するどころやなくなってくるもん。
 ま、ある程度の体力不足は「執念深さ」でカバーできるかもしれへんな。体調が悪くても気力で押し通せることもあるわけやから。でも、いつもいつもそういうわけにはいかんやろう。渓流釣りの場合もラリーの場合も、疲れてるのに無理をすると事故につながる。どっちの場合も、最悪の場合死ぬこともあるわけやから、無理をするのは極力避けなあかん。ラリーも危ないけど、渓流釣りで死ぬ人のほうがラリーで死ぬ人よりずっと多いんやで。
 ということですが、大阪府のさかたさん、少しは参考になったでしょうか?

 本州の渓流はすべて10月1日には禁漁期間に入ってしまいます。9月30日は今年最後のチャンスなのに、天気はあいにくの下り坂。それでも午後4時現在、西尾雄次郎の携帯電話は依然として「電波の届かない場所にある」とのこと。執念と焦燥に駆られて一人川を釣り上る姿が目に浮かびます。釣れても釣れなくても、真っ暗になって水面が全然見えなくなるまでねばることでしょう。無事に帰って来てほしいものです・・・


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