Q & A 2000

 

2005

2004

2003

2002

2001

             

Tip 1

 

No. 1

No. 2-3

No. 4-6

No. 7

No. 8-10

No. 11-12

No. 13-14

No. 7  11月3日 愛知県・ともひろさんから
Question

 インプレッサスポーツミーティングで、西尾選手の横に乗せていただいたものです。めっ たに全日本選手の横に乗る機会がないので、貴重な体験をさせていただきありがとうございました。

 さて質問ですが、西尾選手が練習するときに気にかけていることはどのようなことがありますか。私は、テ ーマを一つ決めて、人と比較しながらすることにしていますが、そのおかげか、昨年よりわずかですが結果が出てくるようになりました。昨年までは一人で練習していたのですが、あまり賢い方法 ではないと思い変更しました。もしよろしかったら何かお聞かせください。

 

同乗者を抽選で選ぶ西尾選手→

 
<テーマを決めるのは「大正解!」>
 久しぶりにマトモな質問が来たな。テーマを一つ決めるのは大正解や! というか、オレは大賛成や。
 ほう。
 で、そのテーマの決め方や。当然自分にとって今一番大事なことは何か、ということをよーく考えて決めることになる。たとえばオレの場合、昔からフェイントをかけて一気に横を向けたらアクセルオンでドリフトっていう走り方にこだわってきた。それに対して周りからは「そんな走り方はムダが多くてタイムは出ない」とか「道幅の狭いところで走るラリーには向いてない」とよく言われたけど、オレはそういうことに耳を貸さずにしつこくやりつづけた。この走り方をマスターするまではとにかくどこでもそればっかり。そうやってこの走り方を完全に自分のものにしたんや。
 つまりナントカの一つ覚えか。わかるわ。
(一瞬の沈黙)
 でも、そんなこと本番の時にしたらソンするやろ? たとえばそのフェイント一発でドリフトという走り方にしても、するのが難しい場面もあるわけで、そういうところでは失敗する確率が高い。どういうことをするにして、もマスターしてないことを本番でするのはそれだけ失敗が多くなってソンやから、本番はとりあえずそのときにできる方法で走るほうが、いい成績を残せるんとちゃうん?
 いや、本番でもそれをするんや。自分の最終目標は何か、と考えたら、その理由は明白や。たぶん、この質問をくれた人の場合も、最終目標はもっと高いところにあって、今出ているそのイベントで勝つことではないと思う。今はフェイントばっかりで走って負けてもええんや。目先の勝負にこだわってたらアカン。
 まあ、言われてみればそうやね。まだマスターしてないから、今日はとりあえず別の方法で、とかいうてたら、いつまでたってもマスターでけへんわ。
 そういうこと。
 アホの一つ覚えの走り方でも、どこでやってもそれがかなりの確率で成功するようになったら、自然に成績も上がってくるやろうしなあ。
 そういうオレも、今の戦いは最終目標とちゃうんやで。奴田原なんかは、まあスパーリング相手みたいなもんや。
 へえ〜。ほな、最終目標って何?
 決まってるやろ。シューマッハに勝つことやんけ。オレが心から尊敬する最高のドライバーはセナ様やけど、死んでしもうたからな。

 そうやねえ。セナ様のスーツと同じデザインの「セナモデル」(注:西尾・山口コンビが最近まで着ていたOMPのレーシングスーツ)も、もう売ってないから、寂しいねえ。でも、この前、新しいレーシングスーツの色を決めるとき、「シュー様の赤がいい」と言ってたのは誰?

 が「ハッキネンのシルバーがいい」と言うなど、いろいろミーハー的意見が出たが、最終的に、北村・晝田組とおそろいのブルーになりました。)
 

<あくまでも理想を追求する>
 オレがあの走りにこだわったのは、それが理想の走りという信念を持ってたからや。あの走り方が「ムダ」やとか「適してない」とかいうのは、あの走り方でタイムを出すことがでけへんヤツ、つまり、あの走り方をマスターできてないヤツの言い訳としかオレには思われへんかった。
 そういう声はものすごく多かったね。でも速いか遅いかはともかく、私は、ラリーの頂点をめざす者はああいう走り方をすべきやと思ってたし、あれ以外の走りで勝っても意味がないとさえ思ったな。今考えると、なんでそう思ったのかわからんけど。
 たしかに、あの走り方をどんな場面でも完璧にやろうとすると難しい。難しくて自分がうまくできないから、あの走り方ではタイムが出ない、と結論づける。オレから見ればそうとしか思われへん。あの走り方ができればそれが一番速いはすなんや。WRCのトップドライバーを見てみい。みんなああやって走ってる。シューマッハでさえ予選でここ一発というときはフェイントで横っ飛びする。それが一番速いからや。本番ではタイヤがもてへんからせえへんだけや。
 なるほど。では私があの走り方で勝たないと意味がないと思ったのは、「速いものは美しい」という真理がその底にあったということか。
 さあ、それはオレにはわからんけど。
 しかし、あれだけみんなにケナされて、よくまあ諦めずにしつこく理想を追求したこと。
 自分のすることには信念を持ってないと続けられへん。ちがうと思ったらすぐやめるべきやね。少しでも疑問をもったら、いくらやってもムダや。
 そらそうや。とりあえずまとめると、イメージの中にある理想の走りをめざして、一つずつテーマを決めて近づいていったらいい、ということやね。そのイメージどおりに自分が走れるようになることが最終的な目標で、その過程の競技成績にはあまりこだわらないほうがいい。やるからには信念を持ってやれ。
 つきつめて言えば、そういうことになるやろな。せやから、とりあえずその時その時で自分にとって一番大事なことをテーマにしていけばいい。たとえば、「直線だけでもアクセルは必ず全開にする」ということでもテーマになり得る。これがカンタンなようで難しいからな。直線でもアクセル踏んでないヤツはいっぱいいる。
<初心者にありがちなまちがい>
 アクセルを踏むには、踏める体制になることがまず第一やしね。タコ踊りしたらアクセルを緩めざるを得んし。・・・しかし私が初めてダートを走ったときは、そんなことすら知らんかったから、タコ踊りしてもアクセル全開で、ストレートの間ずっとタコ踊りしてたな。
 わかるわ。それに、普通の人はコーナーの手前で減速できる自信がないと、全開にはでけへんで。誰かみたいに先のこと考えずに踏むヤツもいるけど。
 たしかにそういうアホなヤツも時々いるなあ。
 だから、「全開でブレーキングする」ということもテーマになる。これもできてない者が多い。
 そうかな? 全開でブレーキングする、つまり「フルブレーキング」というのは基本中の基本やで。直線でなるべく長い間アクセルを開けるためには、最大効率のブレーキングができんとアカンわけやから。私がダートラを始めたときに最初に練習したのは、フルブレーキングするとどれくらいで止まれるか、やったで。あ、ホントの最初はストレートでタコ踊りせずにまっすぐ走ること、やったけど。
 いや、現実問題として、それがわかってないから速くなれへん者がいっぱいいるんや。初心者にありがちなことやけど、手前からソロソロとブレーキを踏んで、踏み加減でスピードを調整する。これは大きなまちがい。ブレーキを踏むときは必ず全開や。つまり、可能なかぎり最短距離・最短時間で必要なだけスピードを殺す、そうなるようにブレーキを踏む。
 ダートラ選手の場合、それはみんなやってると思うけどなあ。慣熟歩行のときに、このコーナーはここでブレーキを踏んだら間に合う、とか考えてるもん。こういうときって、ソロソロ踏んで調整するんじゃなく、ガーンとフルブレーキで減速することを前提にしてるはずやで。
 そう、やった、かな?(自分がダートラをしていたのは遠い昔のことなので、忘れてしまったらしい。)
 でも、実際には、いざ走ってみたらそこまでよう(アクセルを)踏まんかった、とか、予想以上にスピードが出ていてそこでは(ブレーキが)間に合わんかった、ということもあるなあ。それでひっくり返ったこともあるし。
 せやろ。上級者になったら、フルブレーキングでコーナー手前でぴったり合わせる、ということができるようになるけど、それはもちろん最初のうちは無理や。しかし手前からソロソロブレーキを踏んでスピードを調整してたら、いつまでたっても速くはなられへん。
 せやけど、フルブレーキングして、もし間に合わへんかったらどうする? 怖いやんか。
 怖くないように、最初は早い目にブレーキ踏んだらええねん。でも、必ずフルブレーキやで。それで止まってしもてもええ。
 そやな。落ちるよりは、まず完走や。
 いつもソロソロ踏んでる人は、とりあえずいつもと同じタイミングでフルブレーキングしてみたらいい。40km/hまで落としたらまわれるコーナーで、20km/hまでスピードが落ちてしまっても、それはしょうがない。とにかく目いっぱい踏む。じゅうぶん間に合うことがわかったら、もうちょっとブレーキを踏むタイミングを遅らせる。そうやって徐々に遅らせていったらいい。
 ところで、フルブレーキといっても、ただ思いきり踏むだけでは、タイヤがロックして滑るだけで制動距離は延びるわ、ハンドルは効かんわ、という事態になるやろ。だから、初心者の中には、ロックさせないブレーキングが正しい、と思ってる人もいるかもしれん。
 うん。フルブレーキというのは最大の制動効果のあるブレーキングのことで、その加減は路面にもよる。一般的にはある程度タイヤをロックさせるのが一番効果的に減速できるんや。
<理想の走りのイメージを手に入れるには>
 ところで、この質問にあるように、人と比べて練習したほうがいいのかな?
 人と比較するといっても、比較する人がどういう人かが問題や。というか、比較することよりも、理想とする走りのイメージを持つ、ということのほうが大事やと思う。そういう走りのイメージを与えてくれるような人と、比較するのはいいと思うけど。
 なるほど。
 そういう意味で、速い人の走りを見るとか、速い人の横に乗せてもらう、という機会をできるだけ作ったほうがいい。遅い者同志で練習していると、速くなるのは難しいと思う。
 そんなこと言っても、周りにそういう人がいない、という人も多いやろう。
 そういう状況なら、速い人と一緒に練習できるような環境をこれから自分で作っていけばいい。目標に到達するために積極的に環境を整えて行くというのは、何をする場合も大事なことや。
 たとえば、ダートラを始めた頃の私みたいに、自分のクラブに速い人がいなかったら、イベントで知り合った人から情報を得て、速い人たちの練習にガンガン押しかけて行く、とか?
 そういうことでもいい。ただ、迷惑にはならんようにせんとな。勝手について来て勝手なことをされてはこっちも困るし。それに、オレなんかの場合は、ショックやタイヤのテストをすることがあるから、そういうときに来られてもなあ。
 一緒に練習するのなら、その場のルールをきちんと確認してそれを守ることも、安全に練習するためには絶対に必要なことやね。
 そうやな。
 「理想の走り」の確固としたイメージを持つこと、それに向かって現在の自分におけるテーマを決めること、決めたら信念を持ってマスターするまでとことん練習すること。いつものことながら、言うは易く行うは難し。 前の話に戻るけど、やっぱりこれも、最後にモノを言うのは「執念深さ」かな?

Copyright (C) 2005 有限会社ニシオガレージ Nishio Garage Inc.