NISHIO GARAGE


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2001  Vol. 17 issued Dec. 11


SUBARU Impreza Sports Meeting in 有明

 

陽気なペターがファンの心をガッチリつかんだ

 

〜 天真爛漫ノルウェー人に日本人トシ・アライは困惑気味、スタッフは右往左往 〜

 

 

「走り」の大阪、「WRC」の東京

関東では2回目となるインプレッサ・スポーツ・ミーティングは、去年の茨城県・もてぎツインリンクから、今年は都内江東区 有明に場所を移しての開催。スバル契約ドライバー全員集合の勝ち抜きスーパーSSで「走り」を強烈にアピールする大阪とはちょっとちがって、こちらはペター・ソルバーグ、トシヒロ・アライのスバルワールドラリーチーム(SWRT)ワークスドライバーと、チーム・ディレクターのジョージ・ドナルドソンによるトークショー&WRカーのデモランで、「WRC」をぐっと身近に感じてもらおうという内容。

 

というわけで、今回はドライバー西尾雄次郎にはお呼びがかからなかったが、コドライバー・山口顕子(このレポートの筆者です)が、通訳兼ゲストコメンテイター(?)として参加することになった。う〜む、英語の 翻訳はしてるけど、話したり聞いたりというのは1999年のラリー・オーストラリア以来ほとんどない。大丈夫かいな?と不安な私に、オーガナイザーのレイカくんは「大丈夫ですよ!」と何の根拠もなく断言した。

 

快晴に恵まれた12月9日、お客さんも大入り満員(といっても、席がないので“満員”にはならないけど)。ペター・ソルバーグとは初対面だったが、まちがいなく“超”がつくぐらい陽気で人なつこい性格に、緊張しているヒマもない。

 

今回のイベントは、まず午前中にペターとトシのサイン会、New AgeインプレッサWRX STi バージョンに会場のお客さん3人ずつを乗せてペターとトシが運転する「レーシングタクシー」、それからトシとジョージのトークショー、WRカーの助手席にファンを一人乗せてトシが運転するデモラン、というスケジュール。午後はこれの繰り返しで、サイン会、「レーシングタクシー」、それから今度はペターとジョージのトークショー、ペターのデモラン、そして最後が2人のドライバーによるWRカーでの「タイムトライアル」という構成になっている。

 

「ゼンカイ」で「ガンバリマス!」

あれよあれよという間にサイン会が始まり、通訳としてペターの隣に座っておいて、ということに。ファンの人たちはたいてい「来年も頑張ってください」と声をかけていく。頑張ってください、というのは直訳すると「Work hard」かもしれないが、「Good luck」という感じもかなりある。そう説明するとペターは、「Work hardって言われたら、I will work harderって答えたいけど、日本語でどう言うの?」と聞くので、「がんばります!」と言えばいい、と教えた。

 

飛行機で日本に来るときにSTIのスタッフから教わった「ゼンカイ(全開)」に加えて新しい単語を使えるようになり、すっかり日本語熱に目覚めた(?)ペターは、他にも何か言いたい、というので「ありがとう」も教えた。これは簡単だったらしく、元気に何回も「ありがとう!」と言っていたが、大阪弁アクセントなのでまるで谷村新司のような言い方になっている。「あんたのアリガトウの発音は素晴らしい」と、私は彼が「ありがとう!」と言うたびにホメてあげた。

 

そうこうするうち、トシのところでファンが詰まって自分がときどきヒマになるのに気がついたペターは、「あいつ、書くのが遅いからあそこでたまってるんだ。Write faster(もっと速く書け)って日本語で何て言うの?」とまた聞く。「はやく書いて、っ言えばいい」と教えたら、さっそくトシを指でつついて、「ハヤクカイテ!」と言っている。が、この言葉は覚えにくいのか2、3回しか使わなかった。

 

でもファンの流れがトシのところでときどき止まると、やっぱりちょっとジリジリしてる様子。そこで、「遅い、って言ってやりなさい、You're so slowっていう意味だから」と教えたら、これは簡単だったらしく、いきなりトシをこづいて「オソイ!」と一言。さっきまで「ハヤクカイテ!」と言われても平気で無視していた新井くんだが、さすがにラリードライバー、「おそい!」という言葉には敏感に反応した。くるっとこっちを向き、驚いて目をぱちくり。一瞬その姿勢で固まった後に、「な、 な、なんだこいつ、『遅い』だって!? アキラコさん、ヘンな言葉教えないでよ!」

 

サイン会が終わって控え室に戻ると、ペターはさっそく覚えた言葉を手のひらにボールペンで書いた。まず、「ゼンカイ」と書いたつもりだったが、ときどき本人もまちがって「センカイ」と発音するぐらいなので、Senkaiと書いている。SをZに直して、次はOsoi、それから Gambarimas、 Konnichiwaと書く。遅れて戻ってきた新井くんが、「Car is osoi なんて言ったらマズイぞ」というのを聞いてジョージは、「(SWRTは)クルマは速い、ドライバーたちも素晴らしい」と言っている。しかしすぐに、「いや、やっぱり、クルマは速いけどドライバー連中は並だね」と、すました顔で訂正した。

 

コースが覚えられない?

次のプログラムは「レーシングタクシー」。最後のタイムトライアルの練習走行ができるよう、レーシングタクシーも同じコース設定になっている。コースはパイロンと広告看板を立てて作られているが、一般のジムカーナのように複雑ではなくごく単純。私は特に用事はなさそうだったが、走り始めたら面白そうだったので近くまで見に行った。するとスタッフが私を見つけてすっ飛んできた。「ペターさんミスコースしてるんです!1周足りてません、もう一度コースを教えてあげてください!」と言う。

 

自分が見てないのでどこがどうまちがってたのかわからないが、次の回(レーシングタクシーは3本走る)に備えてスタート位置についているペターに、とりあえずこのことを伝え、スタッフから受け取ったコース図を渡した。ペターはそれを見つつも、なんとなくナットクできなさそうな表情をしている。

 

そこで、「私はさっきのは見てなかったけど、今度はちゃんと見ておくから」と言った。そして2回目がスタート。しかし、コース図とは全然ちがう回り方をしている。「全然わかってないやん、むちゃくちゃ走っとるなあ」と私がつぶやくと、横にいた新井くんが、「あいつこんなとこ走ったことがないから、コースなんてゼッタイに覚えられないよ」と言う。

 

コースを覚えてもらわないと最後のタイムトライアルも計時できないので、スタッフは気が気でない様子だ。戻って来たペターが手招きして私を呼ぶ。ここは厳しく、「ぜ〜んぜんできてない!Completely wrong!」と言って、コース図を見せながら一つ一つ説明することにした。「外を一周したらここから中に入って、赤と白のパイロンの外側を回る、それから・・・」という具合。説明しつつも、「ホントにこいつ、コース覚えられるのかな?」と内心思ったが、ペターは、「よしっ、次はちゃんと走るから見ててよ」と言って元気に飛び出して行った。

 

あまり期待はしていなかったが、一応見ておいてやろうと思って見ていたら、いやいやなんと、今度はマトモだ。パイロンの外側を回るべきところで1度内側を通っただけで、それ以外は完璧にできた・・・と思っていたら、フィニッシュ直前で突如ドーナツ! もちろんスタッフはまたもや唖然としたが、乗っていた人たちは大喜びだったにちがいない。

 

控え室に戻ったペターは、「さっきのはほとんど正解だったでしょ? 1か所、外側を通るところで内側を通ったけど。あのとき自分でも、あっ、しまった、こっちじゃない、って思ったんだ」と嬉しそうに言う。私が、「そこと最後のドーナツを除けば、完璧にあってたね」と言ってやると、イタズラを見つかった子供みたいな表情でニヤッ。でもまあ、これでコースもほとんどマスターしたことだし、よかったよかった。

 

机にラクガキする悪ガキ

ジョージとトシのトークショーと、トシヒロ・アライのデモランで午前中のプログラムは終了し、午後はまたサイン会から。ペターは席に着くと、「さっきはずっと黒で書いてたから、今度は赤にしよう」と言って机の上に置いてあったサインペンのうち赤いのを手にとった。そして、トシに向かって、「おい、今度は赤で書くんだぞ」と言っている。新井くんは、「そんなこと、どーだっていいじゃん?!」というような顔をしつつも、おとなしく赤いほうのペンを手にとった。

 

それを見て満足そうなペターは、おもむろに赤いサインペンのキャップを取ると、いきなり目の前の机(赤い布がかけてあった)に大きく自分のサインを書いた。私と新井くんが思わず「あーっ」と叫ぶと、その剣幕に驚いたのかギクッと固まり、おそるおそる、「これはこの後で何かに使うのか?」と聞く。「いいや、終わったら捨てるんでしょ」と答えた私は、「どうせ捨てるものなんだから、なにもあんなに大きな声出すことなかったな」と反省。ペターも、「なーんだ」と思ったにちがいない。

 

サイン会が始まり、ファンの人たちの多くはやはり「頑張ってください」と声をかける。しかし、「来年も」とか「応援してます」とかいう言葉がくっついてたり、声が小さかったりするので、初来日のペターはまだまだよく聞き取れない。午前中のサイン会では何度も私に、「何て言ってるの?」と聞いていたが、午後になると少し耳が慣れてきたようで、「頑張ってください」と言われると、即座に「がんばります!」と答えることもできるようになってきた。でも、やっぱりときどき忘れて、「えっと、何て言うんだっけ?」

 

ガンバリマス、アリガトウ、ゼンカイという三つの言葉を、ペターは手のひらをときどき見つつ適当に口走っているが、どの言葉をいつ言ってもそうハズレてはいないので、たいへん便利ではある。しかし、ゼンカイがまたセンカイになってきた。ペターに度肝を抜かれてばかりの新井くんは、このときとばかり逆襲する。「センカイじゃなくてゼンカイ。センカイはクルクル回るだけでおせーんだよ!」

 

「子供が大好き」だというペターは、子供が来ると姿勢を小さくして顔をのぞきこみ、「コンニチワ!コンニチワ!」と一生懸命話しかける。子供が「こんにちわ」と答えてくれようものなら、それはもう、ものすごく嬉しそうだ。じつはペターは最近自分の子供が生まれたばかり。「男の子?女の子?」と聞くと、「男の子だよ、もちろん!」と、これまたえらく嬉しそうに答えた。でも一応女の私としては、「なんで『もちろん』なんだ?女だっていいじゃないか」と思ったが。

 

相変わらず新井くんの前で人がときどきたまるので、ペターは、「おまえのサインが長いから時間がかかるんだ。Toshi Arai なんて全部書かずに、オレのサイン(Petter S)みたいに Toshi A で止めろよ」と言い出した。そして、「なっ、こういうふうに」と言いながら机の上に Toshi A と自分で書いてみせる。私も新井くんもまたもや思わず「ああっ」と声を出してしまったが、今度はもうペターは平気な顔をしていた。

 

今日の最大の楽しみは・・・

午後のレーシングタクシーでは、ペターは3回ともちゃんと決められたコースどおりに走り、スタッフもひと安心。しかし今度は新井くんのほうがまちがってることに気がついた。といってもこちらは日本人だし、全日本ラリーにはジムカーナのようなSSもあってこういうのは経験ずみなので話は簡単。コース図をもう一度見ればすぐに理解した。

 

そしてペターのトークショー。ここで気になる発言が。「今日の最大の楽しみはこの後です!」 それはつまり、最後のタイムトライアルのことかと思いきや、そうではなかった。このイベントが終わってからのことだという。ふーん、終わってから六本木あたりのオカマショーにでも行くのかなあ? JAFのモータースポーツ表彰式に出席するために東京に来るオジサンたちは、表彰式が終わってからそういうのに行くのを楽しみにしてるみたいだし・・・

 

と思ってたけど、後になってふと思い出した。最大の楽しみって、ひょっとしたら鉄板焼? 実は、朝に集合したときにジョージが、「今日はこれが終わったらテッパンヤキに行きたいんだけど」と早くもSTIスタッフに夕食の相談。それを聞いたペターが、「テッパンヤキって何?」 ジョージ「単にプレート(鉄板)でものを焼くだけのことなんだけど、そのプレートがすごく大きくてこんなふうに長くて(と身振りで説明)、プレートの向こう側にシェフが立って、目の前で肉とかエビとか野菜とか、いろんなものを焼いてくれるんだ。すごくおいしいよ」 ペター「それは楽しみだな! これが終わったらテッパンヤキだ!」

 

そして、最後のプログラムが終わって控え室に戻ってきたとき、二人は口々に、「テッパンヤキ!」「テッパンヤキ!」と叫んでいた。ペターはモンテカルロのテストに向かって火曜日に日本を発ったはずだけど、「最大の楽しみ」は実行できたんでしょうかね?

 

突然のスタートにまたもや唖然

トークショーが終わるといよいよペターのWRカーデモラン。トークショーの最後にペターが抽選で2人の当選者を選び、1人ずつを助手席に乗せて合計2回走る。スタート地点には司会者やプレス関係者、イベントスタッフ、STIスタッフが集まっていた。私も司会者のサポートをするよう言われていたのでそこに行くと、司会者がいきなり、「あーっ、ペター選手、シグナルが出ていないのにもう飛び出してしまいました!」と叫んだ。「あの隣には、同乗者の方は乗っているんでしょうか?」

 

同乗者は無事に乗ったようだとはわかったが、スタッフがまた血相を変えて私のところにやって来た。「シグナルが青になるまで出ちゃいけないって言ってください!」 通常は勝手にスタートしないように、クルマの前に係の人が立っているのだが、カメラマンたちが写真を撮りやすいようにと気をきかせて横にどいたら、いきなり飛び出してしまったらしい。

 

帰って来たペターに、「シグナルが青になるまで出たらアカンよ」と言うと、「シグナルが全然見えないんだ。何か合図をしてもらえないかな?」と言う。午後になって太陽光線の角度が変わり、シグナルがとても見えにくくなっていた。スタート係にそう伝え、シグナルに合わせて指で3、2、1とカウントダウンをしてもらうことにして、一件落着。

 

ゼンカーイ!

デモランが無事終了すると、あとはタイムトライアルを残すのみ。ところがなかなか始まらない。同じチーム内のドライバーが対決するのはよくないんじゃないか、という意見が出て再検討した結果、タイムを計測せずに単に設定されたコースをWRカーで全開走行する、ということになったらしい。なあんだ。たしかに、こんなのはお遊びでどっちが勝っても負けてもどうでもいいんだから、わざわざタイムを計って勝ち負けを決める必要もないという考え方もあるかもしれない。でも、お遊びでどうでもいいんだけど、やっぱりタイムは計ってみたい、というのが大多数の感じるところではないかと思うのだが・・・

 

ともかく、そういうことで、ペターが最初に走ることになった。カウントダウンを指で合図して、シグナル青に合わせてスタート。ペターはちゃんとコース図どおりの場所でターンして赤と白のパイロンの外側を走っている。よしよし。・・・しかし、マトモなのはここまでだった。8の字の片方をまわったところで突然ドーナツを始めたのを見て、またもやスタッフ一同は唖然。

 

WRカーはコース中央でえんえんと回りつづけている。タイヤが磨耗して真っ白な煙がもうもうと上がり、クルマを包み込んで見えなくなるぐらい。スタート&フィニッシュ地点に集まった司会者、プレス、STIスタッフ、ラリー運営スタッフも呆然と見ているしかない。やがてやっとドーナツが終わり、ホッとしたのもつかの間、こんどは、窓からペターが身を乗り出してきた。

 

ゆっくりだが走りつづけるクルマの窓からペターはスルスルと出てきて、屋根の上に座った。司会者が、「あれっ、あのクルマには他に誰か乗っていましたっけ?いや、そんなはずはないですね。なんで動いてるんでしょう?」とフシギそうに言う。ペターは屋根に腰かけたまま足でハンドルを操作し、場内をゆっくり走りながらファンに向かって手を振る。もちろんファンは大喜びだが、私の周りにいる関係者たちは、次に何が起こるかと固唾を飲んで見守っていた。

 

やがてペターがまた窓からスルスルと中に入り、クルマがこちらに戻って来たので、スタッフの間にはやれやれという安堵の空気が流れた。ところがまたもや、フィニッシュ直前に来てドーナツ。しかもその中心がだんだんブレてきてこちらに近づくので、司会者もスタッフもカメラマンたちも、思わず後ずさりする。

 

あと3回もまわればスタートシグナルにブチ当たるんじゃないかと思っていたが、そうなる前にやめてクルマはとうとうスタッフたちの前に戻って来た。はあ〜、やっと終わったか。ところが、目の前に停まったクルマのタイヤを見て、スタッフ一同またもや唖然。前後とも完全にトレッド面が剥離して、ズルむけベロベロ状態になっている。

 

クルマから降りたペターは、司会者にマイクを向けられて元気良く「ゼンカーイ!」と言った。そこまではよかったが、みんなが「これ、どうすんの?」と言わんばかりに揃って指さしたそのタイヤを見て、無言。ペターがどう思っていたのかは不明だが、とにかく次に新井くんに走ってもらわなければならないので、クルマはすぐにタイヤ交換とシート合わせのために作業テントに運び込まれ、ペターも一緒にそっちに行ってしまった。

 

来年はホンモノのスターになるか?

クルマが戻って来るまで、新井くんはヘルメットを持ってスタート&フィニッシュ地点でスタッフたちと待っている。「クルマは新しいタイヤをつけて戻って来るから問題ないんでしょうが、心なしかアライさんが寂しそうに見えますね」と司会者。

 

そう言われればそんな雰囲気。ペターは初めての日本で大はしゃぎという感じだが、新井くんのほうは、久しぶりに帰った日本で、スポンサーやメディアに気を使って「行儀の良い日本の好青年」モードになってるから、悪ガキそのままのペターとのギャップが大きくて、けっこう疲れてるんじゃないでしょうか。

 

タイヤがこんなことになるとは予想もしていなかったので、残っているのは写真撮影用のタイヤしかない。それをあまり減らすわけにはいかないので、トシヒロ・アライの走行はあっさり終わってしまった。

 

この後はスバルワンメイクジムカーナとレプリカカーコンテストの表彰式、そして表彰者との記念撮影、最後にゲスト3名が舞台の上で挨拶してすべての予定が終了する。表彰式が終わるのを舞台の裏で待っているときに、ジョージが、「今日来てくれたファンの人たちに、機会があればぜひWRCを見に来てほしいし、日本でのWRC実現を心から願っています、と最後に言いたいので、司会者の人に時間をもらってね」と言った。

 

司会者に頼むまでもなく、最初からゲストに挨拶をしてもらうことになっていたので、ジョージは言いたかったことを言うことができた。おまけに、「日本でのWRCはできれば東京をスタートにして」とか、「WRCを見に来たときに僕たちのところに来てくれたら、コーヒーでもごちそうしますよ」とまで言ったので、会場は「おおっ」とどよめいた。でも、「コーヒーをごちそうする」のは「そういう余裕があるときに限りますが」という部分は、訳すときに省略したので今補足しておきたい。別にわざわざ言わなくても、ファンなら当然わかっていることだとは思うが。

 

去年リチャード・バーンズがインプレッサ・ミーティングに来たときは、熱烈なファンがたくさんいて、バーンズが外を歩こうものならものすごい騒ぎになった。今年のお客さんたちがそれに比べてずっと落ち着いていたのは、ペター・ソルバーグがまだまだ駆け出しだったからだと思う。でも今回のイベントで彼のファンはぐっと増えたにちがいない。

 

私自身は、彼がフォードにいる頃から、ときどき驚異的なタイムを出すその才能に将来の期待を寄せていたが、その本人を一日間近で見ることができたなんて、後で考えればとてもラッキーな出来事だったと思う。(そのときは忙しくて感慨にふけるヒマはなかったが。)それに、注目していたドライバーが、こんなに気さくで楽しい人だったことも嬉しい。

 

しかし、ワークスドライバーは実力がなければ存在価値がない。彼が本当のスターになれるかどうかは、来年どういうドライビングを見せてくれるかにかかっている。今回のイベントでは、ペターはその人柄でファンを魅了したが、WRC本番ではその走りで私たちを感動させてほしい。私を含めた多くのファンは、それを心から願っていることだろう。

 

Date  2001年12月9日
Place

東京都江東区有明・「プリズムスクエア レインボースペース1」

Weather  快晴