NISHIO GARAGE


Release 2002     

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2002  Vol. 13 issued Dec. 3


SUBARU Impreza Sports Meeting in 東京

 

ブルーの似合うマキネンが初お目見え

〜 急きょ実現した同乗走行と、ハイタッチしながらのパレードランで感動的な締めくくり 〜

 

 

雨にもかかわらず集まった人・人・人

12月1日、東京の空はどんより曇り、時おり雨がパラパラと降るあいにくの天候。しかし、東京スタジアムのインプレッサ・スポーツ・ミーティングの会場では、朝の7時半だというのにもう長蛇の列ができていた。先着200名限りのサイン会チケットをゲットするための行列だ。向かい側に目をやれば、STI ブースもすでに黒山の人だかり。雨でお客さんが来ないのではないかという心配も、これで吹き飛んだ。

 

毎年大阪と東京ではかなり趣向が違うが、今年の東京はちょっと大阪に似た感じ。スバル車限定ジムカーナ、レプリカコンテストなどの「参加するプログラム」と、サイン会、トークショー、デモランなどの「観るプログラム」が同時進行で行われる。これを全部把握しているのは主催者だけではないかと思うぐらい、いろいろなプログラムが錯綜しているが、それだけに、見に来るほうは、好きなところを好きなだけ楽しめる。こんなに内容が盛りだくさんなのは、「お金を払った以上はモトをとらないと」という客をいつも相手にしている大阪の会社が企画・運営を担当しているから?

 

それはともかく、今回は、スバルワールドラリーチームからディレクターのジョージ・ドナルドソンとドライバーのトミ・マキネン、新井敏弘がやって来て、「観るプログラム」のほうを盛り上げてくれる。朝9時半にサイン会が始まると、以後は昼食休憩以外は最後までずっと出演しっぱなし、という、この種のイベントにしては珍しくハードなスケジュール。というのも、「マキネンはヒマだと機嫌が悪くなるので、ずっと働かせておいてほしい」と、密かに指示があったからだとか。さすがにチャンピオンになるような人は働き者というか、きっと効率の悪いことはキライなんでしょうね。

 

そういうわけで、始まったサイン会。「コンニチワ!アリガト!」と自分から声をかけて愛想をふりまいていたペター・ソルバーグとは違って、トミは静かに黙って座っているので、ファンのほうから話しかけることもほとんどない。でも、写真を撮ってほしいという人には、もちろん快く応じている。100人ものサインを終えると、予定時間もほぼ終了した。

 

オークションで何を売る?

次のオークションまでの数分間は、ステージ横の小さいテントで待つ。雨がシトシト降る中、風が吹き込むテントで、トミが思わず「寒い〜」とつぶやいた。「でも、フィンランドはもっと寒いでしょ?」と言ってみたら、「こんなに寒くない」とか。「もちろん気温はずっと低いけど、ちゃんと暖かい服装をしてるので寒くないんだ。フィンランドのように空気が乾燥している所のほうが、湿気の多い所よりも、同じ気温でも寒さはずっとマシだ」という。

 

「ところで、オークションって何を売るんだ?」と、ふとみんなが同じギモンを口にした。オークションに「出演する」といっても、何を売るかは全然知らされていなかった。STI の桂田社長がすでにステージに上がって何かしゃべっている。それを見て、「カツラダを売るのか?」「それはいい、いくらで売れるかな?」「う〜ん、いくらで売れるというより、こっちがお金を払わないとダメなんじゃない?」 その場にいないのをいいことに、ムチャクチャ言ってる・・・。

 

オークションに出ていた品物は、グレート・ブリテンでトミのクルマについていたパーツと、スバルワールドラリーチームのヘビーウェイトジャケットだった。WRカーのパーツだからフツーのインプレッサにはつかないし、みんな泥だらけでキズがついているが、「ウェールズの泥ですよ」(桂田社長)というぐらいだから、ファンにとってはかけがえのない値打ちがあるシロモノ。あまり高くならないうちに切り上げないと、と思っていてもどんどん値がついてしまう。ジョージは思わず、「いい商売だね。」 新井くんは、2万円で売れたパーツを見て、「あれはホントはもっと高いよ。」 (でも、使えないのにねえ。) この売上は慈善運動に寄付されるそうなので、買った人は欲しいモノを手に入れて社会に貢献することになる。メデタシメデタシ、です。

 

モンテカルロで勝つ秘訣は?

次の「レーシング・タクシー」は去年から始まったプログラムで、スバルワールドラリーチームドライバーの運転する市販インプレッサSTi にファンを乗せるというもの。もちろん、ドライバーはジムカーナコースをスピンターンでも何でもして好きなように走るので、乗せてもらった人たちは大喜び。「ジェットコースターより凄かった」という感想が今年もまた聞かれた。

 

そしていよいよ1回目のトークショー。今年は30分のトークが2回で合計1時間とたっぷりあるので、内容を充実させようと例年よりも細かい台本を用意した。といっても、答えはもちろん何が出てくるかわからない。かなり突っ込んだ質問もあったので、こんなこと聞いていいのかな?とジョージに事前に聞いてみたら、「大丈夫、気にしないでどんどん聞いて」と言ってくれたので一安心。さあ、始まりで〜す。

 

今年1年を振り返っての感想をまずジョージに聞いたあと、さっそくトミにモンテカルロラリーのことを質問。普通はクルマが変わるとそれに慣れるのにどうしてもある程度の時間がかかるのに、スバルに来ていきなり開幕戦で勝ってしまうなんて、どんなクルマに乗っても速いんですね、と水を向けると、「あの優勝は本当に嬉しかった。あの週は、自分のラリー人生の中でも、最も素晴らしい瞬間の一つだった」と、話し出した。

 

「新しいチームに入り、短い期間にみんなと力を合わせて頑張った結果、あの勝利が実現した。本当に素晴らしい出来事」と、自分で話すうちに、その時のことを思い出してまた感動がよみがえってきた様子。トミの熱っぽい語り口を聞いている私たちにも、その時の彼の感激が(同じほどではないにしても)感じとれた。

 

それまでちょっと緊張気味だったトミの表情も、これですっかり緩んだよう。「あの難しいラリー(モンテカルロ)で4年も続けて勝つなんて、その勝利の秘訣は何?」という質問には、まず、司会の久保田ジョージさんが、「よそのチームの人、誰も来てませんよね」と場内に呼びかけてチェック(?)。そこでトミが答えようとマイクを口元に持って行ったところ、ジョージが横から、「それは言っちゃダメ!」これは本気だったのかジョークだったのかわからないが、ともかく、監督命令(?)には従わざるを得ず、トミは、「来年のモンテカルロで勝ってから話すよ」と答えた。

 

青い服、似合ってます

ちょっと雰囲気が和やかになってきたので、赤い服から青い服に着替えた感想も聞いてみる。「さすがに長いこと赤い服ばかり着ていたので、最初に青い服を着たときは我ながらちょっとヘンな感じがした。なんかしっくりこないというか・・・」と素直に話す。「でも、ブルーはキレイな色だよね。どうかな、今日のこの服、似合ってる?」と自分から言うぐらい、トミもリラックスしてきた。

 

そこで図に乗ってキビシイ質問。アルゼンチンではレグ3の最初にグロンホルムがサービス規則違反を犯して、いずれ失格になるだろうとわかっていたはずなのに、どうしてあんなに攻めたのか? 繰り上がりではなく、グロンホルムに実際に勝って、優勝したかったから? これについては、「マーカスが失格になるだろうということは知らなかった」のだという。新井くんが言うには、規則違反したらしいという情報は入っていたが、審査委員会の裁定が出るまでは本当に失格になるのかどうかはわからなかったそうだ。

 

「レグ3に入って最初の何箇所かでマーカスに負けていたが、最後の3本は得意な高速ステージなので、そこで挽回しようと頑張った。でも、思ったようにはうまくいかなかったんだ」と、トミは残念そうな表情で言った。そうでしたか。だいたい想像してたとおりだったけど、チームのご本人たちの口から聞けたので、納得しました。これで心おきなく年が越せます。

 

トークショーでにこやかなトミの表情を見たからか、2回目のサイン会ではたくさんの人が、「頑張ってください」とか「チャンピオンになってください」とか声をかけていく。中には、勇敢にも赤いジャケットを着てきた人やら、赤いクルマのプラモデルを持って来た人 もいて、さすがにトミもジョージも苦笑していた。まあ、阪神ファンの集まりに巨人のジャケットを着ていくのとはちがって、充分安全ですが。

 

そして2回目のオークション。1回目の最後に、「2回でクルマ1台分出ますから」と桂田社長が言ったが、それはちょっと大風呂敷です。それにしても、パーツの説明とか仕切りを桂田社長みずからがするうえに、そのしゃべりがなんとも言えず笑える。後ろで新井くんが、「オ、オモシロすぎる。あの人、あれで社長だよ、信じられない」と呆れていた。STi の歴代社長の例にもれず、現社長も、あまり社長らしくない社長さんのようだ。

 

運営側も余裕が出てきたらしく、2回目のレーシングタクシーは、1回目の倍の人数の36人で実施。ということは、1台に3人ずつ乗せるから、トミも新井くんも6回ずつ運転手になるわけ? ふえ〜、しんどそう。あの秘密の指示どおり、トミを働かせまくっているようだ。

 

爆弾発言目白押し?のトーク第2ラウンド

そしていよいよ2回目のトークショー。ちょうどステージに上がる直前に、「日本アルペンも雨で、今日もこんな雨。一体誰のせいだ?」と、新井くんとジョージが責任のなすり合いをしていたところへ、日本アルペンの話題から始まったので、ステージの袖でモメていた話が再燃して、かなり「素」が出たショーになった。

 

雨の責任についてはジョージが負け(ジョージがイギリスから雨を連れて来た、という新井説)を認めた。「東京でこの時期にこんな天気なんて、見たことないよ」と言われては、反論のしようもないと思ったのか? 日本アルペンで雨が降り始めたセクション3のタイヤチョイスの話に入っても、新井君が優勢だった。いわく、「ウェザークルーを配置して天気がどう変わるかという情報をもとにタイヤを決めるんだけど、日本では天気は西のほうから先に変わるのに、ジョージがサービスパークの東にウェザークルーを置いたんだ。こっちはそうとは知らず、ウェザークルーが、『ここはまだまだ天気はいいよ』って言うんでドライ用を履いて行った。当たり前だよ、サービスパークの東にいたんだから。そしたら、SSに着く頃に雨が降ってきて・・・」

 

これにジョージがどう申し開きするかと思いきや、「そんなのは言い訳だよ。普通、ドライバーというものは絶対に言い訳なんかしないものだけどね。こんな言い訳するドライバーなんて、見たことないよ」と、さっきの仕返しをした。

 

それはともかく、今年の日本アルペンは東京をスタート地点に開催され、去年のインプレッサミーティングでジョージが言ったことが現実になった。といっても、ジョージは、「近い将来、日本で東京をスタートにしてWRCが実現することを願っている」という希望を話しただけだし、今年の日本アルペンはWRCではなかったが。「まるでわかってたかのようですが、主催者に何か言ったんですか? それとも、予言の能力があるんですか?」と聞かれて、ジョージはすました顔で、「ええ、そうですよ」と答えた。

 

では来年の予言を、と言われたジョージは、「来年とはいかないが」と話し始めた。「おそらく2004年には、日本でWRCが実現するだろう。そのステージは富士山麓・・・」 この言葉に会場はどよめいた。司会者は、「あくまでもジョージさんの希望で、本当に実現するかどうかは主催者が決定することですね」という注釈をつけたが。実は、日本アルペン直後に、この話の一端がすでにインターネットのワールドラリーニュースで流れていた。多くの人は「マユツバ」程度にしか捉えていなかったかもしれないが、今回のことで一気に現実味を感じることになったのではないか。

 

この話には、ラリーにあまり詳しくない司会者2人もかなり興奮気味。「WRCに昇格するイベントには、ワークスチームが偵察のためにエントリーしてくることが多いですが」と、さらに突っ込むと、ジョージは、「だから我々も実際にそうしている。トシを2年連続で参加させて、フルメンバーでサービスをしてきた。僕もウェザークルーをまちがった場所に配置して、ちゃんと準備してるだろう?」とすかさず笑わせた。トミはといえば、「日本の道についてトシからいろいろ情報を聞いているか」という質問に、「うん、すごく広くて、ハイスピードらしいねえ」とニヤニヤしながら答える。それを聞くなり新井くんが、「It's all bullshit!(しょーむない!)」と口をはさんだりと、ずいぶんくだけた雰囲気になってきた。

 

マジメに締めくくり

しかしさすがに将来のラリードライバーに向けてのアドバイスはみんな真剣だ。まず新井くんが言った。「こういうイベントだけでなく、もっとみんなにラリーを見に来てほしい。峠を走っていた僕がラリーをするようになったのも、ラリーを見たからだ。初めて全日本ラリーを見たとき、『ああ、こいつらすげえ』って思って、自分もあんなふうに走りたいと思った。WRCでなくていい、アジパシでも全日本でもいいから、ぜひ、ホンモノのラリーを見に来てほしい」と。

 

トップドライバーになるにはどういう資質が必要か、という質問に、ジョージはこう答えた。「ドライビングの素質ももちろん必要だが、同時に大事なことは、自分が何をしたいのか、自分がどうなりたいのかがはっきりとわかっていて、その目標に到達するためには、ほかのあらゆることを犠牲にできるような人間でなければならない。」 これはまさに、西尾雄次郎が普段言っていることと同じ。というより、おそらくどんな競技においても、一つの頂点を極めようとすればこの資質は最低限必要なのではないだろうか。

 

そして、ジョージはこうも付け加えた。「なにしろお金のかかるスポーツだから、経済的な基盤がしっかりしていなければならない。トミでも6〜7年はプライベートで走っていた。認められるようになるまでに何年かかるかわからないが、その間、活動を続けていけるだけの資金を調達する能力が、どうしても必要になる。」

 

長年プライベートで戦っていたマーカス・グロンホルムが、資金調達にも万策尽きていよいよラリーをやめようと思ったとき、プジョーからのオファーで道が開けた話が引き合いに出された。それにしても、そうまでしてラリーを続けるには、自分自身に対する並外れた自信と、強固な意志が必要だろう。私たち凡人からすれば、それは「賭け」にも近く見える。

 

来年の開幕戦はモンテカルロで、トミの5連覇が期待される。そして、もし5連覇が達成されれば、同時に、WRC通算25勝となりコリン・マクレーに並ぶ。コリンがシトロエンに乗り換え、難しい最初の1年を迎えるのに比べ、トミは2年目でかなり有利な立場にある。そう話して来年の見通しを尋ねると、トミからはもちろん、来年のモンテカルロでの勝利と、通算勝利記録更新に自信をうかがわせる答えが返ってきた。自分自身で決意を新たにしているように、とても真剣な表情だった。

 

ジョージは、「来年はドライバーズチャンピオンを取りにいく。それはトミでもペターでも、どちらでもかまわない」と言った。ひょっとしたらこの発言は、トミを刺激するための監督としての戦略の一つだったのかもしれない。

 

感動のフィナーレ

ところで、運営本部には午後になってから一つの目的不明の抽選券投入箱が置かれていた。「これは何の抽選なんですか?」と聞く人もときどきいたが、主催側の答えは、「秘密のプレゼントです」というもの。わけがわからないながら一応投入した人たちに、嬉しい驚きが待っていた。

 

実はその抽選は、「マキネンとWRカー同乗走行」の当選者2名を決めるためのものだった。新井くんのデモランが短くて申し訳なかったということで、その埋め合わせとして急きょ決定したプログラムだという。その当選者は、トークショーの最後にマキネン自身が箱から抽選券を抜き取って選ぶ。当選者がその場にいなかったため、3度も引きなおした結果やっと決まった2人目の当選者は、思いがけない幸運にほとんど呆然。「これまで毎年インプレッサミーティングに来たけど、何も当たらなかったんです。今日もみんなハズレだったのに、最後の最後にこんなすごいのが当たるなんて・・・」 トミのほうはラリードライバーの例にもれず、「女の人がいい」と言っていたが、こんなに喜んでくれてるんだから、カンベンしてやって。

 

デモランのコースは、ジムカーナコースとはちがい、場外からの道路も使う。スタートした後に緩いコーナーを一つ過ぎると、あとは長いストレート。右直角ターンで外周路に入り、そこを少し走ってからジムカーナコースに入る。もちろん、ジムカーナコースでは回り放題だが、パイロンでなくてスポンジバリヤを巻いた水銀灯ポールなのでこれもけっこうスリリング。そしてまたいったん外周路から場外に出て、スタート地点でUターンして、もう一度ジムカーナコースまで戻って来る。いや〜、今回当選した人、メチャクチャ得しましたね。こんなにエキサイティングで長い同乗走行コースは、滅多にないですよ。

 

デモランの同乗者を降ろすと、WRカーはフェンス際をゆっくり走って、ファンの人たちとドライバーがハイタッチ。迫力満点のデモランにウットリしたうえに、トミがそばまで来てくれるなんて、もうウルウルになってる人も。いつになく感動的なフィナーレを終えて、最後の挨拶をするトミは、心から嬉しそうな表情で、「ありがとう」という言葉を何度も使った。進行係のスタッフも、トミがとても協力的だったことに感激していた。

 

K山の呪いとは?

これでめでたくインプレッサミーティング東京大会は終了し、来週は大阪。しかし、すでに不吉な前兆が・・・。

山口:(STI の超強力雨男・K山くんを会場で発見して)ああっ、やっぱり!!(だから今日は雨なのね!)

K山:(してやったり、の表情で)へっ、ヘっ、へっ・・・

山口:頼むから、大阪には来んといてね。

K山:行きませんよ。でも、雨は絶対に降らせますから。

山口:ひょっとして、呪いの電話で?(注:K山君から電話がかかってくるだけで雨が降ると巷では言われている。)

K山:ええ。まず手始めに、ニシオガレージにワン切りの連発攻撃を・・・

 果てさて、いったいどうなるのでしょう???

 

Date  2002年12月1日
Place

東京都調布市・東京スタジアム駐車場

Weather  雨