NISHIO GARAGE


Release 2002         

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2002  Vol. 3


Nishio Garage ターマック自主テスト in タカタサーキット

 

準備はちゃくちゃく、仕上げは・・・

〜 忙しい夏を見越して、今から必勝体制づくり 〜

 

アリになってます

 3月16日にファンタスティック・サイドウェイのために広島県・テクニックステージタカタにやって来たとき、翌日こけら落としというタカタ・サーキットを見て、「これはいい」と喜んだ西尾雄次郎。ターマックのセッティングにさっそくここを使うことにした。

 

 今年の全日本ラリー四駆部門は、2月初旬にスノーラリーで開幕した後、5月末の第2戦まで4か月近いインターバルがある。ところがその後は2〜3週ごとにイベントが続く。しかも、グラベル3連戦の3週間後にオールターマックの第5戦MCA BARUが来るので、そのときになって慌ててターマックのセッティングをしていては間に合わない。

 

 さらに、第6戦キロロでいったんグラベルに戻るが、3週後に第7戦モントレー、そしてその2週後にはインターナショナル日本アルペンラリーと、人気のターマックラリーが続く。西尾は“スノーマイスター”と呼ばれてはいるが、一方で、「舗装で西尾さんに勝つのはムリ」と多くの選手に言わせるほど、ターマックを得意としている。「ターマック3戦はなんとしても勝ちたい」と思うのは当然のことだろう。

 

 今年はブリヂストンのタイヤを履くことも西尾のモチベーションをいやがうえにも高めている。昨年までのタイヤサポーターにはターマック競技専用品のラインナップがなく、全日本ラリー用に特別に作ってもらっていた。そのため、競技専用モデルを持つ他社に比べてややノウハウに乏しかったことは否めない。対してブリヂストンはターマック競技で圧倒的な成績を誇る。それが手に入ったのだから、西尾は今、「今年のターマックラリーは絶対に落とせない」という決意に燃えているのだ。

 

 というわけで、時間のあるうちにせっせと準備をすすめようとするその姿は、さながら「蟻ときりぎりす」に出てくる働き者のアリのよう。ところで他の人たちは今ごろどうしてるんだろう?と思っていたら、ヒマをもてあまして全日本ラリー二駆部門開幕戦に遊びに行った人がいた。「ひえつきまで何も出ないなんて退屈すぎる」と、大庭センセイが、どこからか拾ってきたようなスターレットEP82ターボで現れたとか。C-ONEセリカの高橋一志と “異次元の速さ”で一騎打ちを演じたが、結果は惜しくも敗れて2位だったらしい。

 

第1回自主テストは3月22日雨天決行

 さて話は戻って、ブリヂストンのターマック競技専用タイヤは豊富なラインナップがあり、用途に応じて最適なものを選べる、というのが歌い文句。だが、それにはまずそれらの性格を知らなければならない。性格とは、ドライビングにおける特性と、車両とのマッチングの両方をいう。

 

 当初、ターマックテストをオートポリスでやろうと計画したものの、経費節約の点から見ればタカタサーキットの完成は渡りに船。開業から5日後の3月22日にさっそく走りに行った。この日は朝から雨でテストにならないかと思われたが、とりあえずポテンザRE540SのタイプGSで走行。そのフィーリングの良さに西尾も大満足。しかもウェットなのでタイヤも減らない。

 

 雨は昼前にやみ、午後になると時おり陽ざしも出て路面はドライになった。おかげで、ブレーキパッドや、タイヤサイズの比較確認も予定どおり実施。とくに、ショックアブソーバーの設定は1日でウェットとドライの両方がテストできたので、ずいぶんトクした気分。

 

 この日のベストタイムは46秒0台で、もちろんコースレコード。「もっと硬い足にしたら46秒は確実に切れるけど、林道を走るなら今ぐらいの足のほうがええやろな」と西尾。といっても、この日つけているショックアブソーバーではそれ以上硬くすることはできない。時刻もちょうどコース閉鎖の3時となり、第1回テストはこれにて終了した。

 

 途中、姿を見せたタカタの佐々木社長は、「どうじゃろ、このサーキットは? まだ本格的に整備できてないし、舗装ももうしばらくしたらやり直す予定やけど、テストぐらいには使えるかのう?」と心配そう。「いや、ラリーを想定したテストには、ここは最適ですよ」と西尾に言われて、社長は心からホッとした様子だった。

 

第2回はECUデータ取りから

 タイプGSがウェットで非常に良い性能を発揮し、操縦性も申し分ないということは確認できた。しかも、ドライでも1本目から高いグリップを発揮する。しかし、タイムアタックの結果では、そのセッションのベストタイムが出るのはたいてい1本目であることから見ると、やはり熱によるタレは否めない。とはいえ、タイムが落ちるといってもほんのわずかで、しかも、その後は同じようなタイムで推移し、安定したパフォーマンスを見せている。

 

 そこでこんどは同じ540Sの中でもある程度の連続走行を想定して作られたタイプSを試してみることにした。エンジンセッティングのためのデータ取りも同じ日にできるよう、ECUエンジニアのT岐くんと日程を調整し、4月10−11日実施を決定。

 

 当日昼頃現地に着くというT岐くんからは、「(エンジンが壊れるといけないので)僕が行くまでは絶対にサーキットを走らないでください」と言われていたが、不必要に早起きな西尾がそれに合わせるのは不可能と言っていい。早く着いてもすることがないのはわかっていたので、高速道路はずっと80km/hで走り、途中で3回もパーキングエリアやサービスエリアに入り、タカタよりも手前の三次で降りてコンビニとガソリンスタンドに寄り、できるだけ時間をかけてみたのだが、午前10時半にはサーキットに着いてしまった。

 

 タカタサーキットではすでに3台6人が「スポーツ走行」をしていた。競技はしていないが走ることが好きな地元の大学生たちで、ラリーのことはほとんど知らない。しかし、このハデなクルマに乗ったオッサンが、「46秒0台のコースレコード保持者」ということだけは、サーキットのお姉さんから聞いて知っていたフシがあり、西尾が走るのを今か今かと待っている風情。

 

 その気配を察して、西尾は、「エンジニアの人が来るまで走られへんねん。せやから、君らは気にせんとどんどん走ってや」と言ったのだが、やはり人が走っているのを見るとウズウズしてきた。大学生たちの期待のまなざしもヒシヒシと感じる。とうとう、「ちょっとだけならええやろ」と言って走り出した。

 

 しかし、エンジン回転を5000以上に上げないように注意しながらの走行は、やはり精彩がない。あたりまえだが。1周ちょうど1kmのコースでタイムは49秒台とごくごく平凡。それでも、学生さんたちはコンスタントに50秒を切るクルマを初めて見たのか、どうも興奮気味だ。そんな彼らを尻目に西尾は、「こんなことしててもしょうがないな」と、すぐに走るのをやめてしまった。広島空港に着いたT岐くんからの電話に、「あのう、ちょっとだけ走ってん」と言ったところ、T岐くんが「えっ!」と声をあげたらしいから、やっぱりスグにやめたのは正解。

 

 この日はECUのデータ取りに専念して、タイヤ、ショック、ブレーキパッドの変更は一切せず。ただし、データ取り中とはいえ一応全開走行している。それなのにタイムは47〜48秒台とイマイチで、「なんでやろ?」と西尾はサエない表情。でも、学生さんたちはとても嬉しそうだった。速さばかりでなく、初めてみるホンモノのラリー車、その素晴らしいエンジン音、アクセルオフのときにボワッと出るアフターファイアなど、すべてひっくるめて、「すごい!」と感じたのだと思う。どうも西尾のクルマを見て興奮したらしく、全員いつもの倍ぐらい走ってしまったとか。中でもインプレッサGC8の人は130ラップもして、最多周回数記録を樹立した。

 

サーキット初走行の皆さんへ、ご注意

 翌日は関西方面からヒマな、いえ、熱心な3人が合流。スバル好きがこうじてGDBでラリーを始めようと張り切っているG藤さん、ボロボロのランサーエボ1に乗る“懲りん松レー”くん、そしてフライング千早赤坂村・清井ちゃん。みんなサーキットを走るのは初めてで、もうワクワクドキドキという感じ。その気持ちはわかるが、ここはまず、事故なく有意義に一日を終えてもらうために、西尾はくどいのを承知で念を押す。

 

 いわく・・・サーキットは林道ほど危険ではないので、ブレーキングの練習など、林道では怖くてなかなかできないような練習ができるいい機会である。しかし、一見安全に見えても、ちょっとしたことでクルマはカンタンに転倒するし、スピードが高いだけにクラッシュしたら大きいから注意すること。クルマもタイヤもちがうのだから、人のタイムは気にしないこと。タイムを人と比べるのではなく、走り方や足回りを変えるとクルマの動きやタイムはどう変わるかということを知り、それを自分の経験・データとして蓄えることが大事。連続して走るとクルマもタイヤも消耗が激しいので、数周走ったらピットインすること。ただし、ピットインする場合は全開走行からいきなり入らず、必ず最低1周はクールダウン走行をしてからにすること・・・

 

 というふうな西尾師匠の訓示を聞いたあと、それぞれが自分のペースで走り始めた。タカタサーキットの「スポーツ走行」料金は平日1台1日7000円と、他のサーキットに比べて格安。3月に来たときは自動計測用のチップの貸し出し料が1000円だったが、4月には無料になっていた。計時結果のプリントアウトも随時出してくれる。入場料が1人500円。このサーキットの存在も徐々に知れわたってきたようで、この日は午後からさらに4〜5台が走りに来た。見物だけの人は、一日中ぽつりぽつりと来ては帰っていく。

 

 ECUのデータ取りはほぼ終わり、確認段階に入ったので、西尾はショックアブソーバーやブレーキ、タイヤ、空気圧などをあれこれ変えて走る。他の3人もショックの減衰力を変えたり、タイヤの空気圧を変えたりと、西尾のワンポイントアドバイスを受けながらいろいろ試している。適当な頃合を見計らってプリントアウトをもらい、忘れないうちにクルマの仕様変更箇所や自分が感じたことをそこに書き込む。効率的なこの方法に、みんなナルホドと感心した様子。サーキットの練習は気に入ってもらえたかな?

 

熱い走りで盛り上がる

 この日は朝からすでに最適なECU仕様にしてあったのか、前日とはうって変わって西尾は朝イチから46秒台を出した。10分ほどのインターバルを置いた2度目の走行で、早くも45秒台に突入。その後いろいろな設定を試しながらもコンスタントに46秒台で走っている。気温はそれほど高くないとはいえ3月に来たときよりはずっと暖かく、しかも晴天で完全ドライ。この条件ではタイプGSよりもタイプSのほうが良かったが、やはり2ラップ目以降は熱ダレが見てとれた。いよいよ次に試すべきは4月中旬発売のタイプGZの255サイズということになる。

 

 昼休み後の15分ほどの走行で、ECUの確認も完了。西尾の助手席が空くタイミングを待ち構えていたように、コリン(懲りん)が「乗せてください」とやって来た。西尾はコリンを乗せて3ラップする間に、45秒757を出してベストタイムを更新。クールダウンを終えてピットに戻ったクルマから、シアワセに酔ったような顔で降りてきたコリンは、さっそく猛烈アタックを開始した。

 

 それまではイマイチどうすればいいのかわからなかったらしく、悩みながらの走行でタイムもあまり変わり映えしなかった。ところが今は、西尾の横に乗って開眼したのか、ほとんど走るたびにどんどんタイムを更新していく。そんなコリンに触発されたようで、G藤さんや清井ちゃんもガンガン走り出し、それぞれのベストタイムを更新し始めた。

 

 昨日このサーキットをシビックで走っていた大学生が、今日は午後から見物に来て、めったに見られないラリー車の競演に目を丸くしている。この大学生も、サーキットのお姉さんも、「あのエボ1、すごいですね」と、そのアグレッシブな走りに半ば呆れ顔。

 

 余談になるが、このとき、2日後にターマックラリー出場を控えてサーキット走行に開眼してしまったコリンの行く末を、西尾は心ひそかに案じていた。果たしてその予想どおり(?)、SS1スタート後1kmほどで玉砕したらしい。不幸中の幸いなのはクルマがスクラップ寸前のボロだったことか。今は次のラリーに向けて、せっせとニューマシン(またエボ1)を製作中という。やっぱりコリン(懲りん)やね。

 

備えあれば憂いなし?

 タカタサーキットで基本的な部分をおさえたあとも、クルマとドライバーの微調整とメンテナンスは必要。ということで、西尾は少しでも時間を作っては大阪近郊の山道を走っている。それに付き合うのは、山の近くに住んでいる清井ちゃんと、2001年西尾雄次郎車を手に入れて毎日がルンルン、走りたくてしょうがないN村くん。

 

 西尾はタイプGZも林道で履いてみたが、15℃ぐらいの気温でタイヤもさほど温まっていなくてもいきなり最初から強烈にグリップし、同じ場所をGSやSで走ったときよりもキロ1秒ほど速かったらしい。これで、ドライの場合はGZでまちがいないことを確信したという。長い距離を走った場合の耐久テストはできないが、熱に強いGZなら問題なさそうだ。

 

 残る懸念は、雨の林道でタイプGSのどのサイズを使うのかということ。たしかにタイプGSのウェット性能は素晴らしく、路面のキレイなサーキットやジムカーナコースでは255でじゅうぶん走れる。しかし、ラリーの場合、それで大丈夫だろうか? 路肩の落ち葉が道の上に流れ出て、前を走るクルマが泥を撒き散らす。国際サーキットのオートポリスでさえも、土砂降りのときはウェット用セミレーシングよりも、山のあるラリータイヤのほうが速かった。それを考えれば、土砂降りの林道はどうなのだろう? しかし、こればかりはそのときになってみないとわからない。

 

 いずれにしても、ターマックのテストはこれでいったん終了。次は第2戦ひえつきに備えたセッティング作業に入るため、クルマはグラベル用に仕様変更された。この連休がニューマシンでのグラベル初走行となる。

 

体力維持のために仕方なくやっている(と本人は主張する)渓流釣りのほうは、すでに3回出かけて3回とも爆釣だったらしい。過去の経験からいうと、釣りの成果とラリーの成績は反比例する傾向にあるので、釣りが絶好調というのは何やら不安な感じがする。しかし、「備えあれば憂いなし」を肝に銘じて、練習と準備には万全を期す、と言っているので、まずはそれを信じましょう。2年連続序盤で戦線離脱した「ひえつき」は特に、今年こそ気分よく戦いたいものです。お楽しみに!