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2003 Vol. 16


2003SUBARUスポーツミーティング

 

マキネンがスーパーSSに飛び入り参加

 

〜圧巻のラストラン、場内一周のハイタッチ、そして花束に包まれたセレモニーで閉幕〜

 

 

2年ぶりに復活したオールインプレッサによる勝ち抜きスーパーSSは、4年連続ワールドチャンピオンという不滅の大記録を持つトミ・マキネンの飛び入り参加で、かつてない興奮と感動に包まれた。

 

今年は“走り”がさらに充実

 1214日の大阪は小春日和の好天に恵まれ、舞洲特設会場に数多く詰め掛けたブルーのインプレッサが陽光にひときわ美しく映えていた。今年のイベントは、“走り”にこだわるスバルユーザーの熱い思いに応えようと、いつも以上に“走り”を前面に出している。たとえばスーパーSSは、イコールコンディションに近づけて競技性を高めるよう配慮され、予選トーナメントは、ラリードライバーによるA組とレースドライバーによるB組とに分けて行われる。それを勝ち抜いたA組B組2名ずつのドライバーと、新井敏弘、そしてワイルドカードで選ばれた予選敗退者1名の合計6名が、主催者の用意した同仕様のインプレッサStiで決勝トーナメントを戦うというものだ。

 

 毎年舗装の比率が高すぎると言われてきたコースも、ダートと舗装ほぼ半々になった。全日本ラリードライバーだけで構成される予選A組は、全日本ラリーで使用している車両にダート用タイヤを履く、という条件。B組は構成選手の通常の参加カテゴリーが異なるので、主催者が用意したクルマを使う。

 

 われらが西尾雄次郎は、当然優勝を狙っていた。なにしろ、前回こそ2回戦で敗退したが、その前は2年連続で決勝まで進んでいる。しかし優勝はまだ1度もない。今年こそ、と西尾はイベント直前の木曜日に清井克紀とともにプラザ阪下に繰り出し、徹底的に走りこんだ。ダート区間の多い今回はダートが勝負と西尾は考えたのか、ダート用サスペンションでダート用の新品タイヤを履いていく作戦だ。

 

その理由はと聞けば、「前に負けたときは、あんな(ほとんど舗装の)コースでも、こっちはダート仕様で新品のダート用タイヤで走って、あんなに軽いジムカーナ用のクルマにSタイヤを履いてた西原(優勝者)と僅差やった。ということは、今回のコースならダート仕様で新品ダート用タイヤを履いてじゅうぶん勝てるはずや」と言う。その考え方は正しいような気もするが、なんとなくちがうような気もしないではない。しかしまあ、西尾がそう信じているのだから、とりあえず黙って見ていることにしよう。

 

 イベント前日、勝田くんが電話で、「西尾さん、どういう仕様で行きますか?」と尋ねてきた。勝田くんは舗装仕様で山を減らしたタイヤを履いていくという。「そうかなあ、オレはダート仕様のほうが速いと思うで」と答える西尾だったが・・・。

 

またもや予想外の展開に

 さて日曜日。イベントは順調に進行し、いよいよスーパーSSの始まり。クジ引きの結果、西尾は1回戦で勝田くんと対決することになった。「ううむ、最初から手ごわい相手やな」となんだかいつになく不安そう。というより、もうこのときすでに、今回の作戦は失敗だったと思っていた様子。

 

実は、その前に行われたテスト走行で、クルマが全然思いどおりに動かず、挙句の果てに同乗抽選に当たった人を横に乗せてスピンしていたのだった。そういえば、これまでダート用タイヤのポテンザRE461RRE470Rを履いて舗装を走ったときは、クルマも舗装仕様にしてあった。こういうタイヤでクルマがダート仕様のまま舗装を走るテストはせずに来たところ、予想外にサスペンションとタイヤの相性が悪いことに愕然としたようだ。「舗装になるとまったく曲がれへん」と西尾も清井も頭を抱えるが、今となってはもう手の施しようがない。舗装用サスペンションなんて持って来てないし。

 

 というわけで、スーパーSSは西尾も清井も1回戦で予想外の大敗を喫してしまった。実況中継する小平桂子アネットさんも、「セッティングに問題があったんでしょうか」と言ったぐらい、見るからにクルマの動きもぎこちなく、ちょっと普通では考えられないくらいの差がついた。走りに精彩はないわ、スーパーSSの面白みもないわで、楽しみにしていてくれた皆さんには本当に申し訳ない。大敗の理由はそれだけではないとしても、とにかくこれでTeam 5ZIGENの二人の出番は終わってしまった。がっくり。

 

 結局、A組では勝田、炭山が残り、B組からは小林且雄ともう一人(忘れてしまいました、失礼)。そしてワイルドカードで選ばれた吉田寿博と新井を加えて決勝トーナメントが始まった。使われるクルマは同じ六連星をあしらったデザインの2台――1台はブルーのボディにイエロー、もう一台はホワイトにシルバーというカラーリング。

 

このトーナメントで素晴らしい走りを披露したのが、元全日本ダートトライアルチャンピオンの炭山選手。この舞洲で2001年全日本ダートラが開催されたときに優勝しており気分がいいのか、大胆かつ繊細に攻める。しかし、「今日は裕矢の優勝だな」とみんなが囁き始めたそのとき、あろうことか炭山がスピンターンに失敗して止まってしまった。このロスは致命的だ。それでも、もう1周まわる間に追いついて、ほとんど同時にフィニッシュに戻って来た。「あれで追いつくとは、今日は本当に、ノリにノッてるな」と他のドライバーたちが驚いて見守る中、信じられないことに再びスピンターンに失敗。これで炭山は小林に敗れ、初出場初優勝の快挙は夢と消えた。

 

スーパーSSの醍醐味を満喫

 こうして決勝は新井と小林の対決。これはまさにスーパーSSならではの手に汗握る名勝負になった。スタートゲート前に4度戻って来てスピンターンをするのだが、そのたびに、お互いに僅差で抜きつ抜かれつを繰り返す。相手との差を自分の目ではっきりと見ることができるので、それぞれが負けてなるものかと後半になるほどどんどん走りが熱くなっているのが見ていてわかる。4度目のスピンターンを終えて、一瞬早くフィニッシュに飛び込んだのは新井のほうだった。いやいや、どっちが勝ってもけっこう。本当に面白かった。

 

 しかし、さっき炭山が走ったときは、後半にサイドブレーキが熱を持って効かなくなっていたが、今回、同じクルマで新井が走ったときにはまったく問題がなかったようだ。Stiの担当者Hが、「さっきは続けて何度も走ったからでしょう。今回はしばらく止まっている間に冷えたんですね。クルマをイコールコンディションにしたつもりだったんですけど、そういうことがあるんで、難しいですね」と、申し訳なさそうに言った。でもまあ、それは仕方がないでしょう。

 

 ところで、スーパーSSの熱い戦いを実況席から眺めていたマキネンが、「オレも走る!!」と突然言い出したらしい。急遽、左ハンドルで走るマキネンのために新井のP−WRC車を決勝用に仕立てることになった。シート位置を変更し、サスを変え、リストリクターをはずす。(決勝用車両はリストリクターがついていない。)アナウンサーがスバルワールドラリーチームのテントに行き、サービス作業を実況放送する。「あんなこと言ってるけど、ホントはシナリオ通りなんでしょ?」とスバルラリーチームジャパンのU杉カントクに西尾が聞いたら、「いや、ホントにまったく突然だよ、だからこっちはもうバタバタだ」とか。

 

 こうして、誰も思ってもみなかったマキネンと新井のスーパーSSが実現した。スタートは両者同時ともいっていいぐらい、キレイなスタートが切られた。最初は新井がリードしていたが、マキネンはさすがといおうか、スタートゲート前に戻って来るたびに急速にクルマに慣れてきているのがわかる。中間地点では2台がほぼ同時に戻ってきた。さっきのトーナメント決勝と同じく、追いつかれた新井も負けじとスピードアップし、走りが目に見えて激しさを増す。そしてフィニッシュ。わずかにマキネンが早かった。

 

 クルマから降りたマキネンは、子供のように真っ赤な顔をクシャクシャにして大喜び。惜しくも敗れた新井と抱き合って健闘を讃え合う。いやもう、本当に、素晴らしいものを見せてもらった。お遊びイベントとはいえ、モータースポーツの面白さ、楽しさが凝縮してはじけたような、そんな感じ。「まちがいなくWRCの伝説に残るドライバー」といわれるマキネンと、“スーパーSS”で勝負することができたなんて、新井くんにとっても一生の思い出になることでしょう。

 

今回もまた、感動のフィナーレ

 スーパーSSの興奮も冷めやらぬうちに、マキネンの今日3回目のデモランが始まった。これがいよいよ、マキネンの本当のラストラン。「マキネンの、インプレッサWRカーによる最後の走行です」とDJが言うと、会場はなんとも形容しがたい雰囲気に包まれた。WRカーの走りを見るのは嬉しい。でもマキネンがもう走らなくなるのは寂しい。そんな気持ちで全員が見守る中、マキネンは水を得た魚のように生き生きと走った。刻一刻と最後の瞬間が近づく。フィニッシュに備えて係員が大急ぎで「車庫」を用意する。それを見る観客はハラハラ。「車庫」作りはぎりぎりのタイミングで間に合い、マキネンがバックスピンターンを見事に決め、スバルインプレッサWRC2003はピタリと「車庫」に収まった。

 

 スーパーSSとデモランは興奮のるつぼ、そしてファンとハイタッチを交わしながらの場内一周は熱狂の渦。しかし、最後の締めくくりはステージの上でしんみりと行われた。たくさんの花束と賞賛の言葉に送られ、マキネンはいつものように静かな、そして少し恥ずかしそうな微笑みをうかべて、私たちの前から去って行った。

 

 これで今年の舞洲も無事終了。不幸にして今回のイベントを見に来られなかったファンの中には、「もうマキネンに会えることはない」と涙の日々を過ごしている人もいらっしゃることでしょう。それは確かに残念だけど、私たちにはまだペターがいるじゃありませんか。きっと今頃、マキネンがスーパーSSを走ったことを聞いて、「来年はゼッタイにオレも走る!!」と言ってるにちがいありません。Stiの担当者Hも、「スーパーSSはホントに面白い!来年もまたやりますよ!」と言ってたから、来年もきっとあることでしょう。それを楽しみに、あと1年待ちましょう。では、皆様、良いお年をお迎えください。

 

 

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