NISHIO GARAGE


Release 2006         

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2006 Vol. 10 issued Sept. 27


全日本ラリー選手権第8戦 Kiroro Traverse Kamuimindara Rally in Akaigawa

 

初めてラリーでトップに立つも最後は悔しい3位

 

〜  SS3からSS12まで北村が首位の座をキープ、しかしラリーを制したのは最終SSを最速で駆け抜けた炭山だった 〜

 

 

 約2か月の長いインターバルを経て、全日本ラリー選手権シリーズはいよいよヤマ場を迎える。すでにチャンピオン争いは奴田原文雄と勝田範彦の2人にほぼ絞られている中、ポイントリーダー奴田原が世界プロダクションカーラリー選手権(PC-WRC)のキプロスラウンド参戦のため欠場する今回は、勝田にとってどうしても勝っておきたい1戦。いっぽう、ラリージャパン完走という大きな経験を手に入れた北村和浩にとっては、第8戦Kiroro Traverse はその成果を計る格好の舞台といえよう。

 週の半ばに台風13号が少量の雨とともに通過した後、木曜日から北海道は安定した高気圧のもとに入った。ところが、週末もずっと晴天が続くという予報にも関わらず、赤井川村では金曜日の昼頃にむくむくと雲が広がり、雨がラリーコースに降り注いだ。それはたった1時間ほどだったが、今年初めて使 われるBird Valleyの林道は、路面に繁る草が泥にまみれて極端にスリッパリーな状態に。「1レグあたり使用できるタイヤは10本」という特別規則による制約を受けて、各チームはタイヤチョイスに頭を悩ませることになった。

 土曜日の朝9時にラリーはスタート。セクション1ではまず2本の短いSSに分けられたKiroro Traverse を走破し、Bird Valley、ギャラリーステージという4本のSSをこなす。誰もがBird Valleyではウェット用タイヤを使いたかったが、その前にKiroro Traverseを走ることを考えると、ウェット用ではタイヤがもたない可能性がある。しかし、北村をサポートする西尾雄次郎監督は、1998年から7シーズンに渡ってこのラリーを走ってきた経験から、 「ウェットのKiroro Traverseではタイヤは減らない」と断言した。そして、サービスパークや国道は完全に乾いているにも関わらず、Kiroro Traverseの少なくとも後半部分はウェットであることを、日陰の地面の観察によって確信していた。

 西尾の助言を容れてウェット用タイヤを選んだ北村は、Kiroro Traverseの前半部分のSS1でこそ遅れをとったが、後半部分となるSS2ではセカンドベストを記録して2位に浮上、そしてBird Valleyではドライ用タイヤを履いた勝田に約22秒もの差をつけるベストタイムを奪い、ラリーリーダーに躍り出た。西尾の読みどおりタイヤは減らず、スペアタイヤを使わずに北村はこのセクションを走りきった。いっぽう、ドライ用でスタートし、ウェット用のスペアタイヤ2本をBird Valleyでフロントに装着した炭山裕矢が、Bird Valleyで北村に1.3秒差に迫るセカンドベストを記録して、この時点で2位につけた。

 セクション1と同じループを周回するセクション2では、まだ路面はじゅうぶん乾かないと考えた北村は、再びウェット用タイヤ4本を装着して臨んだが、そのアドバンテージはセクション1ほどではなく、じりじりと勝田、炭山に差を詰められていく。セクション3でその差はさらに縮まったが、これは想定の範囲内だ。北村は首位の座を明け渡すことなくレグ1を終え、勝田が2.4秒差で、さらに炭山がそれを3.2秒差で追う。

 いっぽう、SS1でベストタイムを奪った石田雅之は、SS2で立ち木に激突してリタイヤ。また、SS2を制した堀田信も、SS3で側溝に落ちてリタイヤするなど、スリッパリーな路面はラリーリーダーを次々に餌食にしていった。石田正史はSS5でベストタイムを刻むも、ドライ用タイヤで喫したSS2とSS3での遅れが響いて上位から大きく水をあけられ、大庭誠介はデフの不調でスピードが上がらない。こうしてラリーの勝者は早くも北村、勝田、炭山の3人に絞られたのだが、レグ2に入ってその争いは熾烈を極めることになる。

 レグ2を迎えた朝、赤井川村は快晴による放射冷却で気温が2度まで下がり、牧草地はおびただしい夜露に濡れた。北村、西尾ともBird Valleyは再び泥濘地と化すと予想し、ウェット用タイヤで勝負に出る。スペアタイヤは1本しか積まない。勝田と炭山はドライ用タイヤを履き、Bird Valleyでフロントにウェット用タイヤを装着すべくスペアを2本積んだ。

 SS10のギャラリーステージはわだちが深く、こういう道の走り方をまだ模索中の北村は、勝田と炭山の追撃を許したが、これはいわば予定どおり。ところが、SS11のBird Valleyでは、北村は先頭出走が災いしたのか前日ほどのリードを築けず、逆に炭山にはベストタイムを奪われ、その差をさらに縮められてサービスパークに戻って来た。2位勝田は1.1秒差、そして3位炭山が2.8秒差に迫っている。最終セクションはSS12のギャラリーステージ1.41kmとSS13のKiroro Traverse 18.27kmの2本のみ。おそらく、勝田、炭山との差はSS12で消滅し、最終SSが勝負を決する場になることは、北村自身もじゅうぶんわかっていただろう。

 しかし偶然の描いたシナリオはさらに劇的だった。SS12を終えて、北村と勝田は1/10秒単位まで同じタイムで首位に並んだ。そして炭山は、そこからわずか1.0秒のところにいる。

 最終SSを、まず北村が前日の自身のタイムを約12秒縮める5分13秒台で走りきった。2番出走の勝田も、前日のSS9から約12秒縮めて5分05秒台を記録。この時点で勝田は「勝った」と思ったに違いない。ところが3番出走の炭山が驚異的なタイムをたたき出した。前日のタイムを約26秒も更新する4分55秒1でフィニッシュしたのだ。コドライバーの沼尾敬廉によれば、このときの炭山はまるで鬼神が乗り移ったかの如く、コーナーをことごとく最大限直線的にカットし「おそらく誰も通らないようなラインで」走りきったという。

 炭山は全日本ラリー挑戦5年目にして初勝利を達成。これまで一度も優勝争いに絡んだことはなかったが、「チャンスが訪れた時こそ、確実にそれをものにする」という気迫が、土壇場になって持てる力を最大限に発揮させたのだろう。勝田はまたとない好機に痛い星を落としたものの、2位獲得でシリーズポイントではふたたびトップに立った。最終戦 を奴田原より上でフィニッシュすれば、悲願の初タイトルに手が届く。そして、SS3から最終SS直前までラリーをリードした北村は、この初体験を通して「ラリーに勝つ」方法にまた一歩近づいたことだろう。

 この日、遠いキプロスでは奴田原がPC-WRC3勝目をあげ、シリーズトップまであと8ポイントに迫った。全日本ラリー最終戦には、全日本とPC-WRCの二つのタイトルを狙って戻って来るのだろうか。さまざまな思惑にも、やがて結論が出される時が来る。それまであと3週間と少し。今シーズンを悔いなく締めくくれるよう、ドライバー、エンジニア、チームクルーたちの、最後の準備が続く。
 

Photo Album

 

競技結果(完走15台/出走24台)

総合順位

クラス順位

クルー

車両

合計タイム

トップとの差

1位

JN4-1位

炭山裕矢/沼尾敬廉

スバルインプレッサ

1:17:19.8

00:00.0

2位

JN4-2位

勝田範彦/北田稔

スバルインプレッサ

1:17:29.0

00:09.2

3位

JN4-3位

北村和浩/晝田満彦

スバルインプレッサ

1:17:37.6

00:17.8

4位

JN4-4位

石田正史/宮城孝仁

三菱ランサーエボリューション

1:18:15.2

00:55.4

5位

JN4-5位

星野博/佐藤茂樹

三菱ランサーエボリューション

1:19:09.9

01:50.1

6位

JN4-6位

大庭誠介/高橋巧

三菱ランサーエボリューション

1:19:24.2

02:04.4

 

Date

2006年9月23-24日

Weather

レグ1 快晴、レグ2 快晴

Place

北海道余市郡赤井川村・ ヤマハリゾートキロロ スタート&フィニッシュ

Data

SS13本、SS総距離 86.42km、グラベル、ドライ一部ウェット

 

<全SSのタイム表はJRCAホームページのイベントレポート欄からダウンロードできます。>